歴史

ドイツ国境に近いポーランド南西部の町ボレスワヴィエツ(Bolesławiec)とその周辺で作られる陶器は、アメリカでポーランド食器の代表的な食器として「ポーリッシュポタリー」と呼ばれるようになりました。

この地域に流れる2つの川(クフィサ川とブブル川)の流域は良質な陶土に恵まれたことから、14世紀ごろから陶器製造が始まったといわれています。

こんにち知られているポーリッシュポタリーはスタンプによる絵付けの技法を基盤としているのですが、この技法が確立した経緯は2度にわたる大戦を通してドイツの侵攻があったことと大きく結びついています。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけてボレスワヴィエツは一時的にドイツ領となり、この時に移住してきたドイツ人がこの地域の陶器産業を礎にして陶器製造会社を設立しました。この会社が考案した海綿を使ってスタンプする絵付けが、現在のボレスワヴィエツ陶器に受け継がれその製法の特徴となったのです。

第二次世界大戦後ボレスワヴィエツがポーランドに返還され、また国家体制が社会主義に移行したことによりほとんどの陶器製造会社が国営化されました。やがて多くのドイツ人がボレスワヴィエツの地を離れ、作り手がポーランド人で占められるようになりました。

そして、社会主義体制が終わりを告げた1990年代始めに、ドイツに駐留する米軍の家族たちがドイツ国境を越えてボレスワヴィエツへ旅行に出かけるようになり、それがきっかけでボレスワヴィエツ陶器が注目され始めました。その後軍人の家族がアメリカ本国へ帰る際に食器を多く持ち帰ってホームパーティなどで使用したことからアメリカで一気に人気が高まったのです。

さらに2000年にかけて、ボレスワヴィエツの陶器製造会社は大きく変貌を遂げます。ドイツ領だった頃の伝統的な製法と絵柄を踏襲しつつ、細かい絵付けができるように海綿だけでなくウレタンを使うなどさまざまな新しい試みを重ね、柄の多様性、芸術性を高めるだけでなく、その品質と安全性で市場から高い評価を得て、ポーランドを代表する陶器として世界的に認知されるようになりました。
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